教室員が互いに認め高め合い、
誇りをもって幸せに仕事ができるような教室づくりを行っていきたいと考えています
大阪公立大学大学院医学研究科
循環器内科学
教授 福田 大受
この度、大阪市立大学大学院医学研究科循環器内科学を主宰することになりました福田大受と申します。就任にあたり、当科の紹介と決意を述べさせていただきます。
大阪市立大学医学部は1944年に設立されました。循環器内科学教室の前身である第一内科は小田敏郎先生が昭和1948年に初代教授に就任され、その後、塩田憲三先生、武田忠直先生、吉川純一先生が教授を歴任されました。2000年に臓器別教室への編成によって、吉川純一先生が循環器内科の初代教授に就任されました。2006年から先代の葭山稔先生が引き継がれ、その後任として、2022年1月に私が三代目の循環器内科教授に就任しました。
循環器内科は命にかかわる疾患を扱うことが多く、医師としての高い総合力が求められます。一人ひとりの患者さんに適した最良な医療を提供するために、循環器領域を中心に総合的な医学の知識に加えて、患者さんを理解するための心が必要です。それは私たち自身の内面を鍛えることによって可能となります。このような医療を提供できるよう、教室員全員で一致団結して、診療、研究、教育に取り組んでいます。
教室員が互いに認め高め合い、誇りをもって幸せに仕事ができるような教室づくりを行っていきたいと考えています。また、同時に私自身も教室員から多くのことを学び、皆と共に成長していきたいと考えています。
当科は、大阪市内唯一の大学病院の循環器内科として、地域医療における中核病院の使命である高度な総合的循環器医療を担っています。当科には虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)、不整脈、弁膜症、心不全、肺高血圧症、成人先天性心疾患、血管疾患など各領域の専門家が揃っており、我が国トップレベルの診療をめざし、患者さんに最適化した治療方法を選択・提供しております。各種血管形成術、アブレーション治療や植え込み型のデバイスを用いた治療、弁膜症に対するカテーテル治療やバルーン肺動脈形成術など、どの分野においても、我が国で認可されている最高水準の治療を行っています。これに加え、今後は大学病院の使命の一つである先進医療を推進し、広く一般医療現場への普及に努めたいと考えており、治療不可能または困難であった疾患に対する治療が可能になるように、挑戦していきたいと考えています。また現在、集学治療部や心臓血管外科など関係部署と連携し、CCUを含めた集中治療部門の再編を行っています。ご紹介いただいた患者さんをお断りすることなく、24時間、365日対応できる体制の強化を図ります。
また、人口構成や疾患構造の変化に伴い、これまで以上に診療所や病院との連携が重要になってきます。周辺の医療機関の先生方とは、これまで以上に関係を密に保ち、多施設共同研究の推進や、患者様を地域で診る体制を構築していきたいと考えています。軽症から重症まで幅広く対応すべく各部門の専門医が責任をもって、相談・治療にあたりますので、いつでも患者さんをご紹介いただければと存じます。日常診療に有用な情報の発信や意見交換も推進していく予定です。今後も地域医療に貢献できるよう努力してまいります。
人間性にあふれた国際的競争力を備えた人材の育成に努めます。学部学生には講義や実習を通して最先端の医学知識だけでなく、聴診などの先人の技術や知識も次世代に伝えます。さらに教養や人間性の教育にも注力したいと考えます。卒後教育は、初期臨床研修と内科専攻医プログラムに準拠しながら、内科症例をバランス良く経験すると共に、リサーチマインドの育成にも力を入れたいと思います。循環器専門医教育も、疾患別専門診療チームをローテーションする形で、効率の良い研修を進め、希望があればカテーテル治療専門医や不整脈専門医の取得を最大限にサポートします。大学院教育の充実は重要課題と考えます。広く国内外から学生や医療者を受け入れ、研究はもちろんのこと、研究費獲得のための指導にも配慮し、独立した研究者を育成したいと思います。国際感覚を身につけるため、海外留学も積極的に奨励したいと思います。
私自身は医学部卒業後、大学病院や関連病院で内科・循環器に関する研修と診療を行う過程で、幅広い医療知識と技術を習得させていただきました。さらに臨床現場で感じた疑問を解決するための医学研究を経験する機会に恵まれました。それをきっかけに、国内外留学を行い、さまざまな人と出会い、世界が大きく広がりました。将来の日本の医療を担う若者に対して、医学的知識・技術と探求心、さらには人間性を高度に融合させた「Physician Scientist」への教育を後押ししたいと考えています。
研究は大学病院の使命であり、高度医療の実践と質の高い教育の実現に不可欠です。現在の医療、特に循環器内科領域の進歩は特筆すべきものがあります。しかし、現代の医療では救うことのできない疾患があることも事実です。このような症例に対する次世代の医療技術の開発・研究も積極的に進めていかなければなりません。臨床データを読み解く臨床研究と分子生物学的手法を駆使した基礎研究から、臨床をふまえたトランスレーショナル研究を実践し、病態の解明や新規医療技術の開発に繋げたいと考えています。またそれらを情報として世界に発信していくことも重要です。
昨今、日本の研究レベルの低下が話題になっています。現在の医療分野の研究は細分化され、循環器領域も同様です。個々のグループが独立して研究を行うことは効率性や発展性の面からも限界があります。他科、他大学の研究グループとの積極的な交流を行い、新たなアイデアや研究領域の創出を図っていきたいと考えています。研究のための研究ではなく、成果を医療に、そして地域に還元できるような研究を行っていきたいと思っています。
研究というと、とっつきにくくて難しいものという印象を持つ方も多いと思いますが、臨床医が日常臨床の中で抱く疑問や気付きがきっかけになります。私自身、急性冠症候群患者のプラーク破綻がなぜ生じるのかを解明したく、研究を開始しました。そして、臨床研究と基礎研究を基盤としてトランスレーショナル研究に打ち込んできました。その中で多くのものを得ることができました。もちろん研究成果もそうですが、大きかったのが、指導を受けた先生方の信念や熱意、志を同じくする仲間との経験です。これは臨床にも通じるところがあります。研究を始めるのに、過剰に見身構える必要はありません。皆が楽しみながら情熱をもって研究に取り組み、存分に力を発揮できる環境づくりを行っていきたいと考えています。
大阪公立大学大学院医学研究科 循環器内科学
教授 福田大受