大阪公立大学 大学院医学研究科 循環器内科学

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不整脈グループ-研究紹介-

スタッフ

研究の概要

病院講師 吉山智貴

不整脈グループでは、カテーテルアブレーションや心臓植込みデバイスによる治療、それらに関わる臨床研究を行っています。カテーテルアブレーションでは心房細動に対するアブレーションに関する研究を主に行っており、植込みデバイスでは房室ブロックに対する刺激伝導系ペーシングに関する研究を中心に行っています。
また、近年取り組んでいる経皮的左心耳閉鎖に関わる研究も進めていく予定です。

代表的な研究の紹介

1. 持続性心房細動患者に対する左房後壁隔離の研究

肺静脈隔離術はカテーテルアブレーションによる心房細動治療の根幹を成していますが、持続性心房細動に対しては、肺静脈隔離だけでは十分な洞調律維持が得られないことが知られています。肺静脈隔離に加え、左房後壁隔離を行うことで、持続性心房細動に対するカテーテルアブレーションの治療成績が向上する可能性があることが知られていますが、左房後壁隔離に難渋することも少なくありません。
当院では左房後壁隔離完成までに必要な追加通電の有無やその部位(図a:追加通電なし、b:floorへの追加通電、c:roofおよび左房後壁内部への追加通電 )と、臨床背景や通電情報の関連を検討しています。

将来の展望と期待
実臨床でも左房後壁隔離において、roof line作成のほうがfloor line作成よりも苦労することが多く、本研究でも同様でした。今回の検討は「CARTO」という3Dマッピングをしようした患者での検討でしたが、現在はCryo balloonやその他の3Dマッピングシステムを用いたroof line作成にも取り組んでおり、それらに関しても検討していきたいと思います。
研究秘話
3Dマッピングソフトを使いながらデータを抽出したので、3Dマッピングの操作に詳しくなりました。

2. ペーシング部位によるペースメーカ心筋症の発生頻度の違いに関する研究

ペースメーカ患者では、ペーシング頻度が多いと心機能が損なわれる場合があることが知られており、Pacing induced cardiomyopathy(PICM)と呼ばれています。PICMを予防するためにペーシング位置を右室心尖部ではなく,右室中隔とする試みがなされてきました。しかし右室中隔ペーシングに関しては、術中に右室中隔を意図して留置されたものの、実際は異なる部位に留置されていることが少なくないことがわかってきました。
今回大阪市立総合医療センターと共同研究を行い,CTでリードが右室中隔にあると証明された患者と右室心尖部留置の患者のPICMの発症に関して検討を行いました。その結果、リードを右室中隔に留置したとしても,右室心尖部ペーシングと比較しPICMの発症率は低下しない可能性が示されました。さらに、留置部位にかかわらず、術前心エコーでの左室収縮終期径が大きく、植込み後のPaced QRS durationが大きい症例でPICMの発症率が高いことがわかり、報告しています。

将来の展望と期待
現在までの研究で、右室内でいくらペーシング部位を工夫してもPICMを予防することは難しく、今後は刺激伝導系ペーシングに関しても検討を重ねていきたいと思います。
研究秘話
臨床的な経験では、右室中隔ペーシングでもPICMは完全には予防できないだろうという思いはありましたが、実際のデータで証明することができて良かったです。今回の結果は刺激伝導系ペーシングを積極的に行っていくモチベーションになり、今後も研究を進めていきたいと考えています。