慢性心不全に対する治療は、薬物療法や心室再同期療法などのデバイス治療の確立に加え、心臓リハビリテーションが導入され、予後を大きく改善させつつあります。しかしながら、高齢化社会の進行に伴い、治療の進歩を上回る速度で心不全罹患者数は増加しております。そのため、更なる心疾患患者さんの健康寿命延伸のためには、「心不全の病態解明」こそが重要であると考えています。
我々のグループでは、心不全の病態を解明し、心疾患患者さん個々の病態に合わせた、より的確な心不全の予防法、治療法を開発することを目指しています。
心不全グループでは非虚血性心不全患者を対象とした多目的コホート研究を行っています。本コホートにエントリーしていただいた患者様には、心不全の原疾患検索のための心臓MRI検査や心臓カテーテル検査のみならず、各種画像検査による骨格筋および内臓脂肪・異所性脂肪などの体組成評価や心肺運動負荷試験(CPX)による運動耐容能の評価も施行しています。
私たちは本コホートを用いて、非虚血性心不全における骨格筋および異所性脂肪と運動パフォーマンスやフレイルとの関連、骨格筋および異所性脂肪が心筋のリモデリングや逆リモデリングなど臨床経過に及ぼす影響を検討し、研究成果をESC Heart fail.誌、Am J Cardiol.誌、Int J Cardiol.誌などに報告しています。
冠動脈高度石灰化病変は未だ予後不良であり、カテーテル治療の残された課題とされています。当グループでは冠動脈石灰化と相関する血中バイオマーカーの開発を行い、病変形成機序の解明に取り組んでおります。また、石灰化病変では薬剤溶出性ステント留置後の血管修復反応が遅延すると報告されています。光干渉断層法を用いた詳細な解析を行うことでステントの種類やプラークの性状による血管修復反応の違いを検討し、PCI治療後の予後改善につなげる取り組みも行っています。
慢性心不全に対する治療は、薬物療法や心室再同期療法などのデバイス治療の確立に加え、心臓リハビリテーションが導入され、予後を大きく改善させつつあります。しかしながら、心臓リハビリテーション療法の予後改善のメカニズムや、心血管機能への影響については明らかにはなっていません。近年、骨格筋などの筋肉線維から生成、発現し、放出されるサイトカインやペプチドは”マイオカイン”と呼ばれ、心臓リハビリテーション療法による心血管の保護効果への関与が示唆されています。慢性心不全の心臓リハビリテーション療法の影響を血中マイオカインおよび心血管画像診断法を組み合わせた多面的アプローチにより検討し、その予後改善のメカニズムを解明することを目指しています。